【ゴール】果てしない自転車旅【四国一周⑧完結】

ロードバイク





よっしゃああ!!四国一周の最後の日だ!!

バッチリ気合いが入っている!!朝から「ゆるキャン」を観たおかげだ。さとるくんも某スクフェス(スマホゲーム)をやって、テンションが高い。残り140km走れれば、めでたくゴールだ。1000kmという長い長い自転車旅が終わるのだ。

いっくぞぉ~!!

雨「しとしと……」

ボク( ゚Д゚)雨降ってる!?!?実は雨ライドが苦手なぼく。この2か月前に雨ライドをやったせいで、体調を崩しインフルに罹っていたのだ。う~~~む、ちょっと嫌な予感がするが、仕方がない。雨ライド決行じゃい!!

ぼくらは国道11号線を走り始めた。小雨でも路面状況がいつも違う。跳ねる水滴、滑るマンホール、クルマから巻き上げられる水。なによりも先頭を走るさとるくんバイクの後輪から水が飛んでくる。全身がくまなく濡れる。びっちょんこ。。。天候が好転することを祈りながら、ペダルを回す。

あ!

高松の標識!!ゴールの高松が看板に出ている!まだ100km以上あるが、元気が湧いてくる。目標が走行圏内にあると思うと、気持ちがずいぶん落ち着く。ちゃんと帰れるぞ~~。

だが、天候は味方してくれなかった。雨脚が強くなってきたのだ(;´∀`)

雨辛いよ…テンションが下がってきた。シューズの中はぐっしょり濡れて足先は冷え切っている。3月の雨は冷たいのだ。

たまらずうどん屋さんへ駆け込む。指先が震えていた。やっぱり寒い。

肉玉うどーん!(3玉)

ここの店主さんが優しかった。濡れまくった僕らを見かねて、タオルを貸してくれたのだ。ふきふき。ありがたい。これで体から熱が逃げていくのを防げる。ふきふき。ありがとう。

元気を取り戻して、また自転車にまたがる。雨になんか負けない!!絶対に今日ゴールするんだ!!ぼくとさとるくんの意思は固い。きっちり走って来たからこそ、最後まで手を抜きたくなかった。

雨 ざーーざーー!!(無慈悲)

ボク「え…雨…強くなっている」それでもさとるくんと励ましあって雨の中を走り抜けてきた。しかしそれも限界だった。スタート地点から70km。

観音寺市郷土資料館から動けなくなった。体力も気力も使い切っていた。脳内物質も使い切った。8日間過酷なツーリングの疲れがブシュブシュ出ていた。もう無理が効かない…ぞ…。

しばし雨宿りだ!館内で休憩。思わぬものが、いっぱい飾ってあった。

「結城優奈は勇者である」だ!!作品舞台モデルが、ここ観音寺市らしい。

萌え要素を摂取する。かわいい。かわいいよ。

ぼーと休む。…いままで頑張ってきたなぁ。けど雨だ。いやだなあ。すっかり暗い気持ち。景色なんて楽しめないし、旅の楽しい感覚もない。ただ耐えるだけ。苦痛になっていた。もう・・・走りたくない・・・。

さとるくんとこの後の予定を相談する。さとるくん「雨の勢いがすごくて、ヤバイ… しかも最後の道の駅定休日で詰んだし萎えてきた」たしかにその通りなのだ。スタンプラリーの最終ポイントである道の駅が、今日は営業していないのだ。建物内にスタンプが設置されているらしく、今日はどうしてもスタンプが押せないと電話で聞いた。さらに道の駅の名前が「恋人の聖地」とかいうふざけた名前なのだ。これには温厚なさとるくんもブチ切れていた。「ふざけんなよ。なにが恋人の聖地だよ!恋人の聖地に休みがあんのかよ!」と毒づく。ブチ切れる理由はぼくにもよく分かる。

この四国一周スタンプラリーの設定が厳しすぎるのだ。道の駅の営業時間9~18時、たった9時間しかスタンプが押せないのだ。そんなのが1000km区間に29か所もあるのだ。ムリゲー過ぎる。営業時間に間に合うため、本気のトップスピードで何十kmも走った。焦りながら走るのは結構キツかった。そんなことが何度もあった。ときにはさとるくん1人で弾丸のように走ってもらったこともある。時間ギリギリでスタンプを押してきたのだ。努力と筋力がなければ、ここまでのスタンプ全部集まらなかっただろう。苦労してきたスタンプの最後1つが、定休日のせいで押せない。。。この辛さは、ぼくらには耐えられないものだった・・・。

スタンプを集めず、四国一周だけをすればいいだけだが、心にしこりが残る。ぐるぐる色んなことを考える。疲れきったぼくは1つの決心をする。

「もう、旅をやめよう」

さとるくんは心底驚いた顔をしていた。ゴールまではあと70km。これまでの930kmを諦めよう。それがぼくの提案だった。

さとるくん「いやいやいや!!!何言ってるんですか!スタンプラリーを諦められても四国一周はやり切りましょう!!」険しい顔をして激しい口調で言う。正論の正論。走り切るのが正解だと頭ではわかる。だが、感情的にどうしてもイヤなのだ。雨の中、走りたくない。頑張って走ったとしても最後のスタンプはもらえない。これは、やる意味はあるのか…?

心の底から帰りたかった。あったかいお風呂に入りたい。オイシイ焼き肉を食べたい。家の布団でゆっくり眠りたい。それらを我慢するなんて到底できないと思った。あぁ帰りたいなあ。。。

ぼく「さとるくん1人でゴールしてきてな(諦め)」

さとるくん「いやです。一緒にゴールしなきゃ意味ないです」

本気で言っていた。さとるくんの目は死んでいなかった。彼がNOを突き付けてきたのは、これが初めてのことだ。それだけの思いがあるのだろう。

よし。もう一度考えよう。理想のゴールとはなんだ?うん、スタンプコンプリートかつ四国一周だ。今日はさとるくんもぼくも体力がギリギリだ。事故る可能性は高い。なおかつ今日はラストスタンプがゲットできない。しょうがない。禁じ手を使うか。

スケジュール延長だ!!今日じゃなくて明日、家に帰る。これで体力の回復と、スタンプゲットができる。天候も好転するかもしれない。さとるくんは明日の予定を空けられるとのこと。問題はぼくのほうだ。この日は3月19日。あと10日間のうちに、大学院の卒業式、名古屋へ帰省、山形への引っ越しがあるのだ。予定がいっぱい。でも、きっとなんとかなる。めちゃくちゃ忙しくなるだろうけどたぶん大丈夫。スケジュール延長決定!!

(後日談。結果的にはなんとかなった。卒業式には出ないで引っ越し準備をしていた。その準備もさとるくんに手伝ってもらった。超ギリギリだがなんとかなった。さとるくん、ありがとう)

そう決めたら早い。すぐ近くの宿を見つけてチェックイン。あったかいシャワーで生き返った。

雨のライドで74km進んだ。

ふー、やれやれだ。落ち着いてさとるくんに謝る。あまりにも弱気なことを言ったことを悔いたのだ。さとるくんは気にしてないとのこと。よかった。

宿で傘を借りて、雨の中を2人で歩く。疲れて2人とも思考力がなかった。馬鹿な話をする。ぼく「小学生の時、うどんばかり食べていたら白いうんこが出た」という話を一生懸命にする。さとるくんは信じてくれない。なんで白いうんこが出るのか理論的に説明する。が、信じてくれない。「ほんとだよ!ほんとに白いうんこが出るんだってば。うんこの色は食べたもので決まるんだってば!!」こんな説得を20分していた。(頭がおかしい)ついには、さとるくんも呆れながらも笑っていた。「うんこ!うんこ!」と2人でリズムを刻みながら、うどん屋さんへ向かった。あの夜はいい夜だった。

朝。起きる。いざ延長戦が始まる!!

もうぼくらに迷いはない。

幸いなことに雨は降ってない。いける。ようやく今日ゴールできる。興奮する。

どりゃああああああ!!!いっけぇえええええ!!!

ゴールできる高揚感でうれしくて泣きそうで、心の中はぐっちゃぐちゃ。もううれしくて仕方ない。でも旅は終わりたくない。楽しい旅だった。

うおおわ!

ラストのチェックポイント!

「道の駅 恋人の聖地」だ!!今日は営業しているぞ!よかったぁぁああああ!!!小走りでスタンプを探す。「どこだ!どこだ!」「ありました!これです」「うおお!押そう押そう!!」「いええええい」半狂乱になる。

どきどき・・・。

ついに、唯一の空白が、、、

うまったぁあああああ!!押せたああああ!!!!

いやっほーーーーー!!!コンプリート!。:.゜ヤッタァヾ(*´□`)人(*´▽`)ノ゙ァァァァン゜.:。+゜

「うおおおおおお!!!」「押したあああああ!」と騒いでいたら、道の駅の職員さんに囲まれていた。(ヤベ、うるさすぎた?)と思って見る。パチパチ…。え?拍手?

職員さん「きみたち一周したの?おめでとう!!」みんなが祝ってくれる。なにこのサプライズ。ありがとう!照れくさいけどうれしかった。もうすべてが報われた気がした。この瞬間のために走ってきたんだ。自己満足のためだ。自分たちで決めた目標を達成する。そんな行為がとても尊いような気がした。

記念になぜか塩飴をもらった。

さとるくんのこの笑顔。スタンプを全部集めきった喜びにあふれている。

あとは目指すべきところは1つだ。一周のスタート地点であるフェリー乗り場へ行こう。そこで完全な四国一周が叶うのだ。

穏やかな瀬戸内海と三連橋。また天気のいい時にも来てみよう。四国、楽しい旅をありがとう。

ゴール直前だが、1件寄り道をする。

「うどんさか枝さん」だ。なぜここに来たのかって?そう、ここは四国旅1日目で来たお店だからだ~~~!!

うんめぇ。1日目に食べた希望の味。そして9日目のいま、食べる達成の味。同じうどんだが、食べているぼくは別人な気がした。

うおっしゃああああ!ゴーール!!

総走行距離1010km。総タイム8日間7時間46分。果てしない旅なのに、ちゃんと果てがあった。無事にゴールできて肩の力がすーっと抜けた。ケガなくこうして立っていることに安心する。そんな気持ちが一番大きかった。

これにて四国一周達成!!!!日本一長いサイクリングロードが、この道なのだ。

神戸に向けてのフェリーに乗る。

疲労困憊のぼく。\ツカレタ/

フェリーの中でこの旅をいろいろ思い返す。

瀬戸内の青い空。

太平洋の美しい海。

人懐っこいネコ。

高知で食べたカツオがおいしかったこと。

さとるくんのロードバイクが川に流されたこと。

途中で出会ったサンショウバイクさんとのファストライド。

一つひとつが大切な思い出だ。自分たちの脚で走った。楽しいことも辛いことも、全部経験してきた。この旅をして何が変わったのかはわからないけど、1つ確信したことはある。

ぼくは、自転車旅が好きなんだ。

すべてを諦めてしまいそうなこともあった。いやになることも何度もあった。だけど、そんなことは些末なことだ。いま自分が好きなことを全力でやれる。そんなことすべてが愛おしい。好きなことを、好きな時に、好きなだけやる。シンプルな答えにぼくのすべてが詰まっているようだ。

…なんて思っていたら神戸港に着いた。ここでさとるくんとはお別れだ。彼がいなければこの旅は完走できなかった。いや、旅すら始まっていなかったのかもしれない。彼には何回も助けられた。ぼくもさとるくんのことを何度も助けていた。さとるくんと知り合って半年もたっていなかったけど、何年も親友として苦楽を共にしてきた感じがする。ありがとう。

210時間、一緒にいたさとるくんとがっちり握手してお別れした。

あぁ、楽しかったなあ。

空を見上げれば星が輝いていた。

四国一周編、おわり。