はぁ…はぁ…はぁ…
泥のように重い身体は、「もうやめろ!休め!」と警告を出している。けど、やめられないっ…!!
「もうこんなアホな挑戦は二度とやらない」何度そう思ったことだろうか。本当に無茶をしている。身体は素直だ。痛みと猛烈な疲労感で警告してくる。
それでももう、ゴールが見えている。背中がブルルと震える。
「あぁ、ついに来れたんだ。本当に長かったな」
にっこり笑って、ゆっくりゴールへ向かう。
ああぁ…よかった…!
ゴールした瞬間にどっと力が向けていく。本当に無茶をした。
そんな無茶ライドの様子を、今回は話していこう!
8号線キャノボってなに?
さて、今回の「8号線キャノボ」とは一体なんなのか…?記事のタイトルに書かれているけど、よく意味は分からないですよね?なんだこれはって。
まず8号線とは、舞台である「国道8号線」のことだ。新潟⇔京都を結ぶ、約600kmの国道。
今回はアレンジして、短縮ルートを加えて557kmにしてみた。この距離を自転車で走ってみようと。
この長距離を「キャノンボール」という縛りで走ってきた。通称「キャノボ」。
キャノンボールとは、
・520-540kmの距離を
・24時間以内に
・人力の乗り物で
・ひとりで走りきる
というチャレンジだ。(ぼくの勝手な定義)
まあなんともぶっ飛んでいるチャレンジだ。普通なら、こんなことは、やりたくない。
やりたくないんだけど、実は過去3回、この「8号線キャノボ」にチャレンジしている。本当に本当に悔しいライドだった。(ことの顛末は、記事にまとめているので、ぜひ読んでみてね~! 1回目、2回目、3回目)
この挑戦を「8号線キャノボ」とぼくは勝手に呼んでいる。
24時間以内に自転車で557kmを走るとは…無茶もいいところである。
なんでやるの?
なんでこんなことをやろうと思ったんだろう?
これが自分でもわからない。
いや、もともとは24時間ではなく36時間で走る「ゆるキャノボ」として走る予定だった。いままで途中リタイヤばかりで、フルで8号線を走ったことがない。過去の失敗をすこしでも解消させたくって、36時間でも『完走』がしたかったんだと思う。
実際にスタートしても、ずっと五分五分で迷っていた。「36時間で走ろうか…24時間で走ろうか。24時間で走りたいけど、過去に3回も失敗してるんだから、うまくいかないだろうなぁ。まぁ精一杯やろうか」なんて思っていた。
それが走り出してからは、いくつもの幸運が舞い込んで「24時間で走ろう!」と決意して、「キャノボ」に狙いを変更することにしたのだった。
さぁ、走ってきた様子を見ていきましょう!
スタート前
金曜の夜。仕事終わりで新幹線に乗って、新潟まで移動してきた。
いつも通り東横インに。いまの時期ちょうど、「35歳以下は35%オフのキャンペーン」をしていて、とても助かった。ありがたい!(公式ページ)
22時にチェックインして、25時に就寝。おやすみなさい…。
翌朝8時30分。アラームもなしに目が覚める。なんだか睡眠が浅かった気がするけど、まあいつものことだ。イッツノープロブレム。
無料の朝ご飯を頂く。しっかりお米を食べられるのはうれしい。ロングライドでは、腹持ちがいい気がしている。
チェックアウト時刻である10時ギリギリまで、ベッドの上でだらだら過ごす。本番前のリラックスタイム is 大事。
ホテルを出て自転車を組み立てる。ブレーキヨシ!ホイール回転ヨシ!変速ヨシ!装備の忘れ物もナシ!
うん、乗り手も自転車も、準備は完璧だ。
いざ、スタート地点へ。
ここが8号線の起点である新潟市本町交差点だ。ここから500km以上も道が続き、ゴールの京都へと繋がっている。
出発前の作業をこなす。YouTube用の動画を慌ただしく撮影し、Twitter用に現在位置共有をセットし、急いで出発ツイートをする。
ふーーー。ひとつ深呼吸を入れる。
大丈夫だ。きっと557kmは走り切れる。別に24時間で走らなくたっていいんだ。目一杯、楽しんでいこう。
2021年11月6日 10時30分。ぼくは勢いよく地面を蹴りだした。
0~100km(新潟市→上越市)
走り出しは快調!
5kmも走れば市街地を抜けて、海岸線を突っ走ることができる。美しい青色の日本海を眺めて、アップダウンを楽しみ、のどかな田舎の風景に癒される。
コンビニも自販機もないけど、まったく問題ない。150km走れる分の補給食を持っている。ブラックサンダー、ちくわを交互に食べる。いつも通りのルーティン。
あとはアミノバイタル(スポーツ用ジェル)を啜って、栄養を補充する。プラシーボかもしれないが、筋肉の疲労感がマシになるから、かなり重宝している。
あとはホテルでもらったパン。
朝ご飯のお弁当をもらいにいったとき、「パンも持っていきなよ~」と配膳のおばちゃんが渡してくれたのだ。
これがぼくのなかでは大ヒットだった。バターの香りは大いに気分転換させてくれる。甘い補給食にはない「食事をしている感」を味わえて、食事に良い変化を与えてくれる。
この100km区間では、1時間に300kcalを食べることを意識する。どうせこの後は、胃腸が疲れ切って食べられなくなってしまうんだ。食欲があるうちには、しっかり食べておこう。
しかし、本当に信号がない。どこまで行っても、海岸線だ。
信号で止まれた時には、思わず自撮りをする始末。信号休憩が貴重になるほどだった。
幸いにも追い風が吹き、巡航がグッと楽になる。平地では35km/hを切らないハイペースで駆け抜ける。「500kmもあるんだから、焦らなくてもいい」と思っても、ガンガン平均速度は上がっていく。
100~200km(上越市→黒部市)
100kmを超え、上越市に入ってもペースは上がり続け、平均速度26.5km/hをマークした。
こんなハイペースで走った経験もないのに、身体は全然疲れていない。ちゃんと補給もとれているし、眠気もまったくない。
…これは24時間以内を狙えるのでは?
僕のなかに、ポコンと何かが顔を出した。きた、好奇心ってやつだ。
好奇心「ねぇ、いっちゃう?このまま24時間狙っちゃう?」
ぼく「え…でも。いままで何回も失敗してるし」
好奇心「失敗したかもしれないけど、今回はその対策もちゃんとしてきたんでしょ?」
ぼく「たしかに…」
好奇心「追い風も吹いて、体調も良くって、最高のシチュエーションでしょ?24時間でいこうぜ!」
ぼく「おっしゃ!いくか!!」
好奇心にまんまと乗せられて、24時間以内に557kmを走ることを決意した。いや、してしまった。ここからはたくさん地獄を見ることになるだろう。
しかしこうなれば自分の持てる力をすべて出し切るっきゃない。
体力消費を抑えながら、速度を最大限上げる。
ブンブンブン、とホイールがうなりをあげて突き進む。
6時間経過したときには、162kmに到達していた。平均27.0km/hという、とんでもないペースだ。ここまで休憩ナシで一気に走ってきたとはいえ、あまりにも早すぎる。
グロス平均27km/h…まじか pic.twitter.com/Rb2JAva64v
— りっけい (@rikkei2) November 6, 2021
自分でも信じられなくって、思わずツイートしてしまう。
身体の調子を考えても、まだまだ走れそうだ。このまま親不知(おやしらず)を攻略してしまおう!
標高100mちょっとの峠なんだけど、実は8号線の難所だ。
狭い、急な登り、めちゃ混みの交通量。というトリプル役満を抱えている道なのだ。
しかしここも何度も走った経験があるので、落ち着いて対処していく。
決して焦らずマイペースで、じっくり距離を刻んでいく。狭い道では、後続車にはしっかりハンドサインを出して、トラブルの芽を摘んでいく。
ふっ、ふっ、ふっ、と息が切れてくる。
ちょうど夕暮れが美しい時間帯だった。自然の景色に元気をもらって粘って登っていく。
結局、交通量が少ないのに助けられて、難なく親不知をクリアする。
一気にダウンヒルした先には、この旅はじめての県境看板に出会った。
富山県さん、こんちゃーす!
ここまでで180kmとは、新潟県が長すぎるぞ。
さてさて、安心したところでお腹がすいてくる。「どっかコンビニないかなぁ」と思っていると、ナイスタイミングでデイリーヤマザキを発見!
ナイスリスポン!
難所を超えても、まだ平均26.4km/hもキープしていて、思わず笑ってしまった。
必要な物資は走りながら考えていたので、迷いなく買い物を済ませる。
欲望てんこ盛りじゃい!
買い物の量は、絶対にミスをしてはいけない。少なすぎるとカロリー不足に陥るし、多すぎると運びきれない。この絶妙なセレクトも、ファストロングライドのコツかもしれない。
店の外にベンチが設置されていることに、心から感謝する。足をゆっくり休められるのがほんとうにありがたい。
親子丼いただきま~す!
うんまい!うんまい!しょっぱい味がするものがこんなにも美味しく感じるとは。暖かいごはんも心に染み入る。「あぁ食事をしているんだな」と遺伝子レベルで感謝の念がわいてくる。
食べながらでも、今やれる作業をこなしていく。補給食のごみをまとめる、物資を最適な場所に収納する、ドリンクをボトルに詰める、スキマ時間にストレッチをする。
もぐもぐしながら慌ただしく身体を動かす。せっかくベンチがあるのに、あまりゆっくり座っていられなかった。
こうして急いだおかげか、たった13分の休憩で「買い物と食事」を済ませることができた!ラッキー!
巡航も速かったけど、休憩もめちゃ早かった。普段からツーリングに行っている経験が、こういう時に活きてくるんだな。
ご飯を食べるとすっかり気分がよくなった。
身体も精神もすっかり気分転換ができてうれしくなる。まだまだ350km以上あるけど、なんだか走り切れそうな予感がする。きっと大丈夫。
今あることだけに集中すれば、きっと大丈夫。
そう心の中で唱えて、再び地面を蹴りだすのだった。
この先は、地獄を旅することになるのだが…。
つづき→後編はコチラ!
おまけ
この挑戦の様子を、YouTubeにもアップしているので見てみてね~!
オススメのギアとか補給食とか。
今回のルート紹介