はあ、はあ、はあ…
痛みも疲れも、何度も味わった。
残り58km。猶予は3時間…。
450km以上走ってきた僕は、ふっと笑った。
大丈夫だ、きっと間に合う。
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今回はキャノンボール本番編。
キャノンボールとは何なのか、どんな準備をしてきたのかは、以下の記事にまとめておりますので、良かったらドウゾー(*´ω`*)
24時間以内に515kmを走るのだ。
そんな無茶ライドに挑むのだ。
スタート地点。
僕は小さく震えていた。
ワクワク感と恐怖感がぼくを震えさせたんだろう。
ここがスタート地点。新潟市内。
国道7号線の始点だ。
ここから500km先の青森まで走る。
頭のなかでルートを確認する。
うん、問題はない。
唯一の問題は、ただ遠いだけだ。
事前準備もしっかりやってきた。
いざ!出発!!!
地面を蹴り出し、ペダルを踏む。
脚はくるくる回った。よかった。痛みも眠気もない。フォームもいつも通りのはず。
ノープロブレム!
レッツラゴー└( ゚∀゚)┘
7号線バイパスを避けるために113号線を走る。しかし信号が多くなかなか前へ進めない。
1時間で21km。ちょっと焦る。
「まだ慌てる時間じゃない。大丈夫、大丈夫」
自分に言い聞かせる。無茶な走りをすればすぐに動けなくなる。気持ちを落ち着けよう。
すぐさま知ってる土地に入った。
ここは新発田市!
以前に徹夜ライドしてやってきたところだ(゚∀゚≡゚∀゚)
ここから先の道は分かるぞ!
この先250kmは一度は走ったことがある道だ。精神的にずいぶんラクになる( ・∀・)
新潟スタートにしてよかった。昼間に知ってる道を走れるのが、どれほど心強いことか。
スピード、体力の消耗、ペダリング。
この3つに意識を集中させる。
うん走れる走れる。
胎内市、村上市をパスしていく。
うひゃーーー!
気持ちいいいい(*´∀`)
ガンガンいこうぜ。
景色はバツグンに素晴らしい。
ここは「笹川流れ」という景勝地。
ただね、海風がキッツイ!!
いたる方向からびゅーびゅー吹きつけてくるもんだから困った。バイクがコントロールしにくいったら、ありゃしない。
斜めの向かい風でも体力が削られる。スピードを重視するあまり、踏みすぎていた。
落ち着こう。こんなシチュエーションなんて何度も遭遇してきたじゃないか。ロードバイクに乗っている限り、外的要因からは逃げられはしない。風であったり、坂だったりする。どうしようもないことがたくさんある。
だからこそ不利な条件のときには、無理をしちゃダメだ。静観するのがベストアンサー。力を出さない。焦らない。この後きっと運が向いてくることを信じて、力を蓄えておく。有利な状況を待つのだ。「いい流れ」を待つ。
この考え方はトランプとか人狼ゲームで学んだことだ。ゲームにも「流れ」がある。
自分に流れが来ているのか来てないのか。対人ゲームならここの見極めができるかどうかで勝敗が決まる。配られたカードの強さよりも大事なのが、流れを見ること。と思っている。
有利なときにはどんどん勝負に出る。理想的なゲーム展開を予測して、強いカードを躊躇せず出していく。自分に運が向いているんだと思い込む。するとホントに運が向いてくる。不思議なことだ。
逆に不利なときには静観あるのみ。最低のシチュエーションを予測し、負けを最小に留めることにする。無茶なんて絶対しない。いい流れを信じて待つだけ。
ロングライドも同じで、いま自分がどんな状況にいるのかを冷静に見れれば、最大のパフォーマンスが発揮できる。パワーのないぼくは、頭を使うっきゃない。
自転車乗りでパワーがないというのは、配られたカードに切り札がないことと同じだ。状況は打破できない。
いま不利な状況にいる。荒れ狂う風は受け入れる。歯向かわない。少しずつでも前に進む。体力は決して使わないように努める。
強風にさらされて20kmは進んだろうか、身体から休めと言われている気がした。
確かに休憩もなく耐えて走っているだけで、体力は消耗していた。降りてちょっと横になる。5分だけ目を瞑る。
ごうごうごう…頭の中で血がめぐるのがわかった。
少し休むだけでも身体はかなり楽になる。回復できた。ラッキー!
回復するにも体力が必要なので、体力切れを起こす前に休むのが結構大事だったりする。
まだいい流れが来ないが、忍耐走りをする。
けど、やっはり海はキレイだなー。
特急いなほカッコええなー!
92km地点。
1回目のコンビニ休憩をとる。
結構な疲れが出ていた。静観モードでちまちま走っていたが、体力は削られる。
「このあとも風が吹き荒れるなら、ぼくのパワーではゴールできないな」
と、ちと不安になる。
しかし!!
山形県に入った途端に、風が味方になり始めた。うひょーーい!!
風速1~2m/sの微風だが、追い風に変わったのだ。
よしよしよしよし!!ひとりでガッツポーズをする。
この瞬間を待っていたんだ。
おにぎりを頬張り、水で流し込む。
賭けるならここだ。一気にケイデンスを上げる。
ジャカジャカジャカジャカ!!
チェーンからギアに力が伝わっていく。回すだけで30km/hが出る。
たのしいいいいい(* ゚∀゚)
自分が求めるスピードで走れるのが、ロードバイクの醍醐味だ。
『ここは踏む』『ここは回して加速する』
考えた通りにバイクを進められるのが楽しくて仕方がない。うひゃー!!
ここで投資しておけば、のちのち自分を助けることになるだろう。体力を使ってでも高速で走る。
静観モードで力を蓄えていてよかったああ。
ただ調子がよくても、考えるべきことはたくさんある。
第一にフォームがいつも通りか。
力んでペダリングすると痛みの原因になる。痛みが出れば500kmなんてとても走りきれない。
無茶はするが、無謀ではいけない。
ジャカジャカ回しながら変なフォームになってないか確認する。
ハンドルとサドルへの荷重、おしりの位置、膝と足首のスムーズさ、足裏から伝わるペダルの反発、使う筋肉。これらがいつも通りか、ムダがないか。細かくチェックする。
うん、問題はない。きっとフォームは崩れていないだろう。
あとは体力消費のスピードだ。息を切らしていては、体力ゼロへまっしぐらだ。息は切らさない。鼻呼吸で走れる限界のスピードを保つ。
内臓の疲弊にも気をつけるが、大丈夫そうだ。まだまだ元気。
快速りっけい号となって突き進む!
けど、気になるものを見つけ思わず足を止めた。
???
船に対して「ご自由にどうぞ!」???
なんだ、これ(^p^)
以前立ち寄った温泉地もそのままスルー。
温泉入りたいなあああ!
疲れを感じる前に、休憩も取っていく。
胃腸をいたわる意味でも野菜モグモグ。
長距離を走るなら栄養バランスを崩さない。このビタミンや食物繊維があとから効いてくれる。これも投資の一種。
鳥海山キターーー!!
この時点で150km。
鳥海山大好きっ子のぼくとしては見るだけで元気がもりもり湧いてくる。カッコいいんだよなあ、鳥海山。
ちょっとした登りをこなせばすぐに…
秋田県入ったあああ!!!
ハイペースでここまで来れたことが嬉しい。休憩込みで22km/hで走れている。ヨシヨシ、予定通りだ。身体に痛みもない。
200キロ地点。
かなり疲れが出始める。ここまで200kmを懸命に漕いできたが、まだまだ走らねばならないことに戦慄する。
秋田の眺海も素晴らしい。
由利本荘市から秋田市へ細かいアップダウンをこなしていく。
ここが回復ゾーンだ。登りはゆっくり、下りは脚を止めていく。風向きもいい。たんたんたん、とリズムを刻んでいけば距離は稼げる。
秋田市内へ。
そろそろ夕暮れ。
ちょうど中間地点にて、大休憩をとる。
これから夜を越えるために栄養をつけるよ!!
中間地点で残り12時間42分。
もしかしたら達成できるかも、とワクワクする。ただしここまでの疲労感、知らない道、暗い道ということでペースはグッと落ちていくだろう。
『ここからどうペース配分するか?』が肝だ。
さあ、ここからはディオの時間だ。ゴゴゴゴ…。
ナイトライドが好きな僕としては、嬉しい時間帯。夜が来ることをずっと楽しみにしていた。
だが、絶望と苦しみのナイトライドになることを、このときは予想もできていなかった。
つづき。後編はこちらからドウゾー(*´ω`) 後編