【前編】1泊2日で行く『自転車×キャンプ×ハイク』の旅が楽しすぎた話

202109栗駒山

オンライン飲み会をしていた時のこと。

りっけい(私)「山行きたいなぁ…山ぁ(ほろ酔い)」
?「お、山イイね~」
りっけい「栗駒山に行きたいんだよね~」
?「いいじゃん!一緒にいこう!」

と、まぁなんとも軽いノリで決まった。誘いに乗ってくれたのは…

S.K.さん(Twitter:@r0adbike_sk)だ!

自転車バリバリ乗るし、山をガンガン登るし、キャンプだって大得意。嬉々として過酷なライドをこなす妖怪ライダーさんだ。S.K.さんと一緒に走った記事のまとめはこちらから!

りっけい「え、一緒に行ってくれるの?」
S.K.さん「うん、いくいく~。せっかくならキャンプして、朝から登るのがいいんじゃない?」
りっけい「え?なにそれ」
S.K.さん「自転車乗って、キャンプして、山を登るって感じ」
りっけい「うわ…めっちゃ楽しそう!!」

S.K.さんがナイスな提案をしてくれるもんだからテンションが上がる。

『自転車×キャンプ×ハイク』の3つを組み合わせかぁ。やったこともない遊び方だが、なんだかやれそうな気がする。うん、いけるでしょ!なにより楽しそうだ!

そんな軽い気持ちでこの旅が始まったのだった。

『自転車×キャンプ×ハイク』計画

さて、計画はこうだ。行きたい山から逆算していこう。

舞台は、東北の栗駒山(くりこまやま)だ。

栗駒山は、岩手県と秋田県と宮城県の3県をまたぐ標高1,626mの山。東北の屋根である奥羽山脈の女王と呼ばれる絶景の地なのだ。

秋の栗駒山は人気があるので、メジャーな「いわかがみ原ルート」ではなく、マイナーな「天馬尾根ルート」で行ってみよう。

その「天馬尾根コース」にアクセスしやすい須川湖キャンプ場で一泊しよう。ここが1日目のゴール地点。

キャンプ地までに100kmぐらい走りたいところ。S.K.さんに聞いてみると、ここらへんで面白いコースが走れるとのこと…!集合場所は山形県の新庄駅にして、こんなコースで行ってみようと決めた。


こうして、1泊2日の「キャンプツーリングハイク」という贅沢が詰め込まれたプランができあがった。

最高のアウトドアなのでは?

トラブルいっぱいのツーリング

そんなわけで当日。

まずは自転車パートであるツーリングだ。

ざっとこんなコースを辿るよ。

距離100km、獲得標高2,000mほど。かなりの田舎道を走るので、補給ポイントが全然ないらしい。その代わり、いい道があるんだとか。

朝8時半。

新庄駅まで輪行(電車に自転車を積み込んで移動すること)して、S.K.さんと落ち合う。

おはよー、おはよー!

S.K.さんは自宅のある仙台市から自走してきたらしい…!すでに100kmを走ってきたんだとか。いきなり妖怪ムーブをかますS.K.さん、強すぎませんかね?

走り出す前に

ちょっとパンク修理!!

朝気づいたときには空気が抜けていたパターンのやつ。劣化していて小さな穴が開いていたんだろうと、推測して交換する。(家に帰ってから調べるとサイド面から小さく穴が開いていた。やはり劣化していたっぽい)

40mmハイトのホイールなので、エクステンションバルブ(延長バルブ)をつけておく。

初めてのチューブラータイヤの交換だったけど、予想よりもスムーズに交換できてよかった。修理ができてほっとしていると、S.K.さんバイクの後輪に不具合が出ているらしい。

S.K.さん「やばい…穴あいてる…」
りっけい「え…?」
S.K.さん「チューブレスにシーラント*入れているから、穴は塞がるんだと思うけど」

タイヤのトレッド面(地面と接する面)に小さな穴が開いて、空気がふつふつ出てきている。これはヤバい。

*シーラント:液状のシーラントをタイヤに入れておくことで、タイヤに穴が開いてもシーラントが埋めてふさいでくれる。ただし穴が大きいと塞がらない。そうなるとメチャンコ大変な交換作業(地獄ver.)をする羽目になる。

S.K.さんのタイヤに空気を補充して様子を見ると、なんとか空気漏れはなくなった。

ふー…冷や汗が出る。

まだ1mも漕いでないのに、不穏な空気が流れる。このパンクコンビで果たして、無事に旅を終われるのだろうか…(フラグ)

では、いこう。出発だ!

上り坂でも34km/hでぶっ飛ばすS.K.さん。

後ろについて走っていると、「遅くてごめんね。前走ってもらっても大丈夫だから!」とS.K.さんがにこやかに話しかけてくれる。

遅 い … ?

そんな疑問符が浮かんだが、一気に加速して前に出る。


そもそもS.K.さんの乗るバイクは、未舗装向けのグラベルロードバイクだ。

タイヤは40Cと太いし、早く走るためのバイクじゃない。しかも後輪はパンクして空気圧がめちゃ下がっている。それでゴリゴリ走るもんだから、とんでもない脚力をしてるのが伝わる。


45kmも走ると、鳴子温泉街に入る。

S.K.さんが調べてくれていたセブンイレブンにピットイン。ここが最後のコンビニになるらしい。


2人して、ご飯をもぐもぐしながら作戦会議をする。

S.K.さん「この先にはまったくコンビニがないんだよね」
りっけい「グーグルマップで調べても、コンビニ全然ないわ…」
S.K.さん「明日登山して、街に降りるまで一切補給ポイントがなくってね。ご飯食べるところもない」
りっけい「…てことは、24時間以上、店には出会わないと?」
S.K.さん「そういうことです」
りっけい「あはは~」
S.K.さん「ははは~」

りっけい「やばくない?(真顔)」
S.K.さん「やばいよ?(ニコリ)」

りっけい(なんで笑ってるんだ…?)
S.K.さん「でも、さすがに自販機はあると思うから、水はなんとかと思う」
りっけい「よかった~自販機あればカロリーもとれるし」
S.K.さん「うん。8割5分の確率で、自販機はある」
りっけい「だよね~いくら山道でも自販機はあるよね」
S.K.さん「大丈夫、大丈夫~」
りっけい「なら、水は1Lだけ積んでいくわ」

水は途中の自販機で買えそうなので、補給食をたんまり買っておく。24時間、無補給になるシチュエーションなんて初めてだから、なにを買うかずいぶん迷ってしまった。


推定3,500kcal。タンパク質と糖分を多めに。まだまだ暑いのでチョコのお菓子が買えないのは、ちと残念。


補給食だけで3400円も買う日が来るとは…。

本格的に山道に入る前に、やっておきたいことがあった。

パンク修理だ!

朝にタイヤ交換をしたんだけど、なんだか空気が抜けやすい。タイヤが変形ぐらい空気の減りが早い。

てわけで、クイックショットなるアイテムを使ってみる。


こいつをバルブに刺してやれば、空気と一緒に”パンク修理剤”も入って、小さな穴をふさいでくれるらしい…!なんて便利なやつなんだ!!すごい!!!


すご……うぎゃああああ!!??


人はこんな顔になるんですね。

ねぇ、不穏すぎない??あまりに不穏が過ぎているよね?

文字通り「穏やじゃない」この状況。

バルブから抜こうとしたら、パンク修理剤が飛び散る大惨事。全部意味がなくなった。修理どころか被害を広げるだけの悪夢。もう最悪だ。

原因はエクステンションバルブ(延長バルブ)にあったんだけど、その話を書いていると記事がハンパじゃなく長くなってしまう。次々回の記事にでもまとめるので、ここでは割愛!!そっちでアホの顛末を読んでやってね!


ひーこらひーこら苦労して、ようやくパンク問題を解決。

ふー、よかった。

S.K.さんに迷惑をかけたかと心配だったけど、げらげら笑っていていたのでまあヨシとしよう(なにが?)。

結局コンビニ休憩に1時間も要してしまった。残り55km走り切ってしまおう!!


やはり山の道ってのはいい。


自然の中にある人工物が、たくましく美しく建っている。

自然に還りつつある道を、2人だけで駆けていく。誰もいない場所を走る気持ちよさと言ったら、何物にも変えられない…。

「ここらから先に楽しいグラベルがあるんだよ」とS.K.さんがうれしそうな声を上げる。

グラベルってのは未舗装路のことで、砂利や石だけの道のこと。今回のルートが面白くなる、と言っていたのは、このグラベル区間があるからだ!

たった1本、道を曲がっただけで…

どどーーーーん!圧巻の景色だ。

気持ちよすぎる…。
真っ青な空のもと、足元にはグラベルが敷かれ、遠くの山々がぼくらを取り囲んでいる。

S.K.さんもぼくもカメラを持ってきているので、お互いに撮りあう。カメラ好き同士なので、構図やカメラ設定を相談をするのが、なんとも楽しい。

S.K.さん、絵になりすぎている。


後ろ姿までイケメン。

S.K.さんが過去ライドで見つけたルートをそのままトレースする。

不思議な白い世界。


なんていう種類の岩石なんだろうか?

グラベル区間はまだまだ終わらない。

グラベルからグラベルを繋いで走る。


本当に雰囲気がイイ。

S.K.さんのグラベルロードバイクとは対照的に、

りっけいバイクは純粋なロードバイクだ。

グラベルにまったく適していない。

それどころかつい2週間前に買ったフルカーボンホイールを履いている。

スピードが出る代わりに、超繊細なホイール。一回でもこけたら壊れてしまうような代物だ。(このホイールを導入した経緯はこちらから)

グラベル向きじゃないので、めちゃくちゃ神経を使う。

しかもグラベル区間の斜度10%以上だなんて、あまりにもキツすぎる…!

ひぃ~~~~!

この時の、りっけいが苦しんでいる様子を、S.K.さんが動画にまとめてくれている。ナイスすぎる。


アホなりっけいを見て、笑ってやってくださいまし。

ひぃひぃ騒いでようやくグラベル区間を抜け出す。

つ、疲れた…。そして、のどが渇いた…。

「グラベル区間は水が3倍必要になる」ってS.K.さんが言ってたけど、本当だ。1L積んでいた水は残り0.2Lほど。でも、ここから先には、民家やホテルのある地域を通るので自販機はあるだろう。

もう少しの我慢だ。

舗装路に戻ると、一気に進む。やはりピュアロードバイク。舗装路ではガンガン進んでくれる。


湯浜峠クリア!後ろに見えるのが、栗駒山だ~~!ついにここまで来たぞ!


あとはキャンプ場に向けて、ひたすら走るだけ。

でも電波がないから、あと何kmなのかグーグルマップで調べられずツラい。

アップダウンをこなして走る。ついに水を飲み切ってしまった。でも、もうすぐ人のいる地域に入れるはずなんだ。

まじでなんにもないいいい!!!


広がるのはただただ山々。

民家もまったくない。

8割5分の確率であると思っていた自販機すらない!!くそう、1割5分の方を引いてしまったか!

やばい、やばい、やばい…。

体の水分がごっそり抜け落ちて、力が入らなくなってきた。体を動かすのがかなりつらく感じる。

そんな様子を見かねてS.K.さんが「電解質タブレットを溶かした水」を差しだしてくれた。えぇ、神様ですか…?いいんですか?

ありがとうございますっ!

と一口飲むと、体が喜んでいるのがわかる。力が急激に湧いてきて、踏めるようになる。ありがてぇ、ありがてぇ。

グラベル区間で、肉体も精神もボロボロになってしまったけど、最後に自分に鞭を打ち、気力だけで前に進む。

気づけばキャンプ場についていた。きつかった、ほんとーにきつかった。

そして、なによりも「水が飲める」と安心感がすごかった。

キャンプ場の隣の施設の「栗駒山荘」へ移動する。(隣と言っても山道1.3kmあったが)

ああぁああ!!会いたかったよ!!自販機!!!

見た瞬間に、思わず手を合わせて拝んでしまった。はぁ、生きて自販機に対面できるとは…嬉しすぎる。

S.K.さんも喉がカラカラだったらしく、2人してむさぼるようにジュースを飲む。冷たい液体が喉を通り抜ける気持ちよさと言ったら格別だ。

「あ、ありがてぇっ…涙が出るっ…」「犯罪的だ…うますぎる…」

後から気づいたけど、走り出してから10時間、まったくトイレに行かなかった。運動しているのにもかかわらずトイレに行かなかった。本当にギリギリの戦いをしていたんだな、と実感する。

テントに戻る。「今夜は補給食たべてさっさと寝よう。ほんと疲れた…」2人の意見が一致した。

寝る格好に着替えていると…

「おふたりさん、よかったら焼き鳥食べない?」

幻聴かと思うようなありがたい言葉が聞こえた。ぱっと振り向くと、お隣のキャンパーさんが、焼き鳥の乗ったお皿を片手にニコニコしている。

え???

えええ?


お酒まで???

焚火しながら


餃子も


しらすも。

ミニトマト、ピーマン、豚肉、牛肉も次々出される。

ぼろぼろの格好で自転車を持っているぼくらを見かねて、お隣のソロキャンパーさんがご馳走してくださったのだ。3人で焚火を囲みながら、談笑する。

補給食じゃない暖かいごはん。しかも焼きたてのお肉や餃子、ビタミンの取れる野菜まで!!おいしい!おいしすぎる!!

お隣さんには感謝してもしきれない。涙が出そうなほどおいしいごはんとお酒を頂いて、1日目の夜が更けていく。ただ補給食を食べてそのまま寝るはずだったのに、こんなに楽しい時間を過ごさせてもらえるだなんて。ありがとうございます…!

トラブルだらけのツーリングだったけど、こうした優しさに助けられてすごくうれしかった。

たらふく食べたぼくは寝袋にくるまり、ゆっくり眠りにつくのだった。明日は栗駒山を登るんだ、といわくわくしながら。

つづく

S.K.さんのブログにもこの日のこと書かれてるよ!見てみてね!
ぼっちと孤高の分かれ道

S.K.さんのブログとSNSも面白いので、見てみてね!

ブログ:ぼっちと孤高の分かれ道
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Instagram:@s.k_solitary_cycring