【24時間以内】520kmのR6キャノボを達成してきた話【前編】

202210R6キャノボ

国道6号線キャノンボール。略して「R6キャノボ」。

仙台⇔東京間の520kmを、自転車でソロで走り切ってしまおうというチャレンジ。しかも24時間以内に。…ちょっと何かがおかしい気がする。

機材やルートについては別記事の「準備編」にまとめているので、よかったら読んでみてね!


さてさて、チャレンジの先日。

自宅から1時間半の電車に揺られて、仙台のホテルに到着!

枕元にAC電源コンセントが配置されている…このホテルよくわかっている!

「みやぎ宿泊割」で6,700円する宿泊料が、実質1,020円になって笑ってしまった。ついにホテル1,000円時代がきた。

3,000円分のクーポンを使って、コンビニでお買い物。晩ご飯と翌日の朝ご飯、そして補給食をたんまり買い込む。案外3,000円は簡単に使いきれた。自転車乗りは食費がかかる。

ホテルでご飯を済ませてシャワーを浴び、21時過ぎにはベッドに横になる。あらためて明日のことを考えてみる。

作戦はこうだ。

予定では朝9時に、仙台を出発する。明日は強烈な北風のアシストを受けられる。今回は南に一直線にむかうだけの簡単なライド。そこへ北風が舞い込んでくれるので、最高のキャノボ日和だ。

しかしスマホで天気予報を見ると、ゴール付近の千葉と東京では、朝方4~6時に雨が降る予報…。これはマズイ…!

それもそのはず。「強烈な北風」が意味するところは「南に低気圧がある」ということだ。雨の降りやすい低気圧に向かって風が集まる。風と一緒にぼくも低気圧に向かおうというのだから、天候が回復するとは考えにくい。

そんなことを頭のなかでぐるぐる考える。家から離れたホテルだし、いまさら雨具は準備できない。「なるようにしかならない」と分かっていても、あらゆる状況を想定してしまう。

そんなことを考えているうちに0時をまわった…。仕方ない明日は5時出発にしよう。4時半にアラームをセットして眠りにつく。…Zzz

…むくり。スマホを点けると朝3時を示していた。勝手に目が覚めてしまった。寝つきが悪いのも、目覚めがやけにいいのもキャノボ前の緊張感だろう。アドレナリンさん、仕事しすぎでは?

二度寝を期待して、うだうだとベッドに転がる。しかし眠れない。諦めて、おにぎり二個と、豚しゃぶサラダを食べる。

今朝の睡眠時間が3時間。その前日が11時間睡眠。うん、なんとか行けるか。

4時半にホテルを出て、スタート地点へ向かう。


今回使う自転車は、グラベルロードバイクだ。

FUJI Jari1.3というアドベンチャー系のグラベルバイク。乗車フォームがアップライトで自分に合っていることと、太いタイヤがロングライドにおいて有利だと考えて、今回採用したバイクだ。さてはて、一体どんな走りができることやら。

仙台市の苦竹交差点に到着!

2022年10月24日(月)AM5:00。長い長いチャレンジが始まる…!

いざスタート!仙台を出発する。

気温は8℃とやや冷える。平日の朝5時だと、さすがの仙台も交通量がめっきり少ない。

進路を南に取ると、追い風を感じる。

太陽が出てくると、そよ風だった追い風が強烈な追い風に変わっていく。街がまだ眠っている間に、名取市→岩沼市→亘理町と駆け抜けていく。3時間で80kmとなかなかいいペースで走り続ける。

それにしてもサムイ…!朝8時を回っても気温は10℃ほど。事前の予測では、15~18℃となるはずだった。想定と5℃以上も違うと、ちょっとキツイものがある。

太陽は帆の出からずっと雲に隠れているし、これ以上気温が高まるとは期待できない。「もうちょっとだけ我慢しよう」と思っていたが、ここで限界!

我慢できず防寒着をフル装備。

貧弱な装備が、すこしはマシな装備に進化した!やったね!(サムイ)

サムイことを除けば、最高に走りやすい!キレイなフラット路面ばかりだ。震災の影響で道路が作り直されていて、タイヤがぬるぬる進む。新品同様の道路ってこんなにも走りやすかったのか…!と妙な感動をしながら突き進む。

ちょうど100kmでセブンイレブンにピットイン!すでに福島県に入っていた。

トイレと、水の購入を済ませる。

ここから先は道の領域だ。2011年の福島原発事故によって、規制されていた国道6号線。それがつい3週間ほど前に、自転車も通行可能となったのだ。

一体街はどうなっているんだろうか?

どきどきしながら浪江町へ入っていく。

まず街に入って、目立つのがこの看板だ。

「左折車 通行証確認中」

この国道6号線より東側の道路に進むためには、通行証が必要らしい。

実際に通行止めになっていたり、側道の入り口には警備員さんが立っている光景を見かけた。いまもなお立ち入りが制限されている区域もあるんだろう。

その他にも、「帰宅困難区域につき通行制限中です」の看板もよく見かける。

この看板を見ると、すこし心が痛む。いままで普通に入れた場所が突如入れなくなってしまう。家や思い出の場所もなくなってしまうことを考えると、すこし重たい気持ちにもなる。

そして商業施設も荒廃している。

大手チェーン店でさえも、荒れ果ててしまっている。撤去もされず、10年以上放置されているようだ。店内にはきれいに整理されているのに対して、駐車場は草木が伸び放題だ。すこしずつ手が加わっていくんだろう。

しかし荒廃しただけの世界ではなかった。部分的に街が復興されているところもあり、普通にコンビニやスーパーが営業されており、活気のある街もいくつか見かけた。被災地であろうと元の生活のように毎日を過ごしている人たちを見て、どこか安堵する気持ちにもなった。

これから街がどうなっていくかまったく見当もつかないが、まずは「自転車通行可能」の段階まで復興できて本当に良かったと思う。通らせてもらって感謝することしかできない。

街を一通り見たところで、頭がふわふわする。ね、眠い…。さずがに3時間睡眠で強行すべきではなかったか。

どこかで仮眠でもしようと思っていると、首尾よく公園を発見。


誰もいないベンチで少し横にならせてもらおう。タイマーを3分に設定して目を瞑る。

ピピピ!とアラームが鳴る。

眠れたわけではないが、かなり頭が楽になった。今回は風向きや坂の少なさからしてかなり余裕がある。また眠くなったら無理せず止まって目を瞑ろう。そう思った。

いやしかしこの区間は、地味なアップダウンが続く。2%ほど緩やかに登って、緩やかに下る。そんな繰り返しばかりだ。

「いわき市に行けば楽になる」と何度もつぶやいて、アップダウンをやり過ごす。

175km地点。ようやくアップダウンが終わり、いわき市に入った。この時点でグロス平均スピードが25.4km/hとなかなか悪くない。(休憩や信号待ちを含めた時速)

ちょうど12時だったので、ファミリーマートへ立ち寄る。


オムライスいただきま~す!

く~~うまい!卵とデミグラスソースの組み合わせはいつ食べでもオイシイに決まっている!最高だ。流動食のように一気にかき込み、ごちそうさま。

ご飯をしっかり食べるとメンタルリセットできるのがいい。今回は補給食で食べ繋いでいくが、お昼と夜だけはコンビニご飯を食べる予定だ。そうした方が気持ち的に休まるし、まとまったカロリーを摂取できる。ぼくにはこのスタイルが合っている。

200km地点、北茨城市。

ヤバい…視野が狭くなってきた。眠さが再びぼくを襲っていた。脳が視覚情報を遮断している。

信号待ちで目を瞑って、すこしでも脳の回復を図る。すこしは休めた気がするがダメだ…!この頭の処理速度で行動を走らない方がいい。

コンビニの駐車場のわきで横になる。

5分のタイマーを掛けて目を瞑る。ゴウンゴウンと脳内を値が巡っていくのを感じる。

「あ~~、休まる~~!!」

睡眠はとれなかったが、かなり頭はすっきりした。もし次、強い睡魔が襲ってきたらチャレンジは中止しよう。これ以上無理するのは危険すぎる。

寝てスッキリしたな頭で、あることに気づく。「ここまでの走り、なんか遅くなかった?」

なんとなくタイヤを触ってみる。
「空気圧下がりすぎてない?」

今回使っているのは、タイヤ幅44mmのチューブレスタイヤだ。組付けが悪いのか、細かい穴が開いていたのか、分からない。

携帯ポンプを取り出してシュコシュコと空気を入れる。手触りの感覚だが、2.3→3.0barぐらいまで上がっただろう。

この空気入れが功を奏した!

「うわ…自転車漕ぐの楽しい…!」自転車の進みが圧倒的によくなった。

しっかり頭を休められた分、急に楽しくなってきた。

「いやぁ、キャノボ最高だなぁ」

自転車をひと漕ぎするたびに、前に進むのが楽しくてたまらない!

トラックの走行風にも助けられるし、追い風も相変わらず強烈に吹いてくれている。空気圧を上げたことで、気持ちもバイクも好転してきた。

勢いに任せて突き進む!

250km、大洗市。

「この交差点…知ってる!」

「ここを左に曲がるとおさかな市場があって、その先の交差点を右折すると大洗駅につながる!」

うっひょーー!すごい!まさか仙台から大洗まで道が繋がっていただなんて!

そう、この大洗町。ぼくが好きな作品「ガールズアンドパンツァー」の舞台となった土地なのだ。何度聖地巡礼にきたことか覚えていない…。本当に大洗の聖地巡礼は楽しかった!

大好きな大洗町にきて、一気にテンションが上がる。

ここまで250km。経過時間は10時間18分とかなりペースがいい。元気いっぱいで思いっきりペダルを回して、突き進む。

後半へつづく