初めて登山してみたら、絶景にしか出会わなかった話【後編】

202006岩手山

ふぁぁああぁあああ!!?

その頂きに立った時、ビリビリと衝撃を受けた…!!

なんだこの景色は!

360度で広がる世界がぼくを待ってくれていた。
あの岩も、あの木々も、あの残雪も。さっきまで見上げていた景色が、ずっと下に位置していた。

『ほんとに歩いて登って来れたんだ…』

雲が晴れたとき、眼下に広がっていた景色はさらに想像を超えていた…。


この記事は、標高2038mの岩手山を登ってみた話の後編!

前回記事:初めて登山してみたら、絶景にしか出会わなかった話【前編】

すこし時を巻き戻して…。

大滝さん(仮名)に連れられて、標高1000mまで登ってきた!壮観だ!

右手を見れば絶景だが、目の前の道は…

壁じゃねーか!!

なにこれ、反り立つ壁なの?SASUKEなの?
ここまでの道のりでパンパンに膨れ上がった脚に鞭打って前に進む。おららららああ!!!

…ぜぇぜぇ…いやいや無理ですわ。全然進まない。

大滝さんは軽い足取りで、タッタカ登っていく。あとから聞いてみると大滝さんはすごい人だった。

「富士登山競走」という日本一の山岳レースで上位5%に入ったり、5時間かかる富士宮コース(富士山五合目~山頂)を45分で走り登るド変態さんだったのだ。そりゃ登山のスピードも早いはずだわ。そもそもぼくの周りに、こんな変態さんばかりが集まってくるのホント謎すぎる。

大滝さんが目視射程外になってしまったので、ここからは1人旅だ。

急峻すぎて木がおかしなことになってる。これが登山道っていうんだから笑うしかない。


ふふふ、これは楽しい。ロッククライミングだ…!!

過去の登山者が辿ったコースをトレースする。「ここに右足を置いて、左手をこの岩にかける」と頭の中でパズルを解いていく感覚。道はそこにあるんじゃない!自分で切り開いていくんだ!!


ふぃーー!休憩!

どっかり座り込む。慣れない運動に身体が悲鳴を上げている。あまりにも強度が高すぎる。

落ち着いてくるとまわりの景色が良く見えてくる。葉っぱがさわさわと揺れ、木漏れ日がゆらゆら踊る。

山のアジサイを眺めて癒される。

うん、いいんじゃない?誰もいない静かな世界にひとり身をおく。贅沢な時間の使い方だなと思う。

よし、いこう!あと少しで山頂になるはずだ!

え、雪が!!

下界では25度を超えていたぞ。山は別次元の季節が流れているのか。ここも道なので、無理矢理で突破する。

一体どれだけ歩いてきただろうか…?

ついに山頂を眼前に捉えた…!!

ここからはラストスパートをかけるぞ!待ってくれていた大滝さんをパスして、先行して登り始める。

ここからは岩場ゾーンだ。冷たい風が吹き、高山植物しか生えていない。荒涼とした大地を踏みしめて前を目指す。

「足の置き場もない」とはまさにこのこと。浮石を踏めば落石になるし、砂利を踏めば足がずり下がる。

それでも小さな1歩で標高を稼いでいく。

大滝さんも辛そうだ。あとちょっとで山頂ですよ!!

ふと振り返ってみれば、

見たことないスケールの山が広がっている。すんごい!!

「あとちょっと…あとちょっと…」

目の前の道がなくなり、視界が急にひらけた…。ついに来た。

うらっしゃぁああああああいいい!!!標高2038mに登頂だぁあああああ!!!!

スタートから3時間、長い長い道をたどり、頂に立った。

この喜びをどうやって表現したらいいんだろうか。

目で見る景色ではなく、身体ぜんぶを使って感じる景色。景色に溺れる快感というべきか。

混ざり気のない絶景の中に、異物として自分が入り込む。この一体感が気持ちよくってたまらない。

火口の迫力が満点。活火山なので、いまここで爆発が起きるのかもしれない。ドキドキ…。

大滝さん「さぁ、お楽しみの時間だよ!」
ぼく「うっひょーーー!」

コンロでお湯を沸かすってことは…?


もちろんカップ麺だ!!!!

風が吹き荒れ、冷たい空気が頬を叩く。その環境下で手に取るカップ麺の暖かさ…!!
いざ、いただきます!!!

ずるずるずる…はぁああああああ!!!

うまぁまぁままああああ!!!(こだま)

なんだこれ!!いつものカップ麺とはまったくの別モンだぞ!!しょっぱいスープも、謎肉のジューシーさも、麺の歯ごたえも…すべておいしい!!感度が100倍になったように脳に直接ウマさを送り込んできやがる!!あーーー最高!!!!

大滝さんもにっこり笑顔で頬張っている。これだけの楽しみで登山は頑張れる。うん、間違いない。

お腹を満たした後は、火口のまわりをお散歩する。

見てよ、この壮大な景色。スケール感がぶっ壊される。


この道なら延々と歩いていけるぞ。


いくら見たって満ち足りない。

雲が流れ、景色を隠してしまうこともある。けど、その分…

晴れてくれれば、また素晴らし景色を見せてくれる。

山頂の雲の流れは速い。

まっしろな世界と、天空の世界を交互に見せてくれて、脳がトリップしちゃう。


いやぁ、想像を絶する景観だった。ここまでの苦労をぶっ飛ばしてくれる快感に浸っていた。

山頂で1時間ほど過ごしただろうか。時刻はもう16時半だ。

下山するよ!!

下りは楽だが、楽じゃない。使う筋肉が違うのはいいが、体重を支えて降りる必要があるので負荷がデカい!

遭難は下りで起きやすいので、集中力を切らさないで行こう!!

ざ、ざ、ざ…とテンポよく。

途中にも絶景が待ってくれていて、思わず立ち止まる。ああ素晴らしや。


ここに永住したい。

疲労困憊の身体にブーストをかけて、脚を止めないで進む。脚がプルプルしているのはきっと気のせいだ。

登りの1.5倍の労力(当人比)をかけて4時間…

無事に下山完了!!

陽が落ちていく中、山中を歩くので、メンタルまで壊れるかと思った。下りのほうがきつかった気がする。

大滝さんとお互いの労を労い合い、ふっとひと息をつく。
行ってきたんだ、自分の脚だけで標高2000mの世界へ。


振り返って見た岩手山がなんだか小さく感じられた。


その後は、盛岡名物の冷麵と焼肉に舌鼓を打ち、

銭湯に入り体力を全回復した。相変わらず脚がプルプルしているのには、笑ってやり過ごすしかなかった。

そして23時半。

テントを設営し、


深夜のカップ麺!お味はカレーだよ!!

これもまたうまいんですわ。とびきり頑張った一日の〆に、カレー麺を食べる。おいしくないわけがない。

もぐもぐしながら視線を上げると…

これである。

満天の星空を借景に、岩手山がそびえている。どこまでも魅力的な山だ。堂々とした振る舞いにココロが震える。荘厳で偉大で、どこか親しみを感じる不思議な山だ。

楽しい経験をできたことを嬉しく思いながら、テントの中にもぐりこんだ。大滝さんもさすがにお疲れのようで、テント泊を断念して車中泊するようだ。

目を閉じると、あっという間に意識を失っていた。

あさ。

またも絶景に迎え入れられた。岩手山、また好きになっちゃったじゃないか!!!


というわけで、初めての登山は大成功だった!

まったくの知らない遊びを教えてくれ、往復600kmの運転をしてくれた大滝さんには感謝するばかりだ。
チャレンジした先に「新たな楽しみ」があることを痛烈に感じられた。また新しい遊び方を覚えてしまったので、これから少しずつ登山していくことになりそうだ。

つぎはどこの山を登ってみようかな…?

おわり。