ぐっはぁあああああ!!
ハァハァハァハァ…!!
なんじゃこの道はぁぁあああ!!!!
ぼくとガマさんは叫び倒していた。
『きっつううううい!!』
切れる息、動かない足、上がりっぱなしの心拍。
登って降りて、登って降りて…また登って…
強烈な逆風にもボコボコにされてきた。
こんな過酷なツーリングだなんて聞いてないぞ!!!!
時は遡り、その前夜。
ぼくとガマさんはツーリング先を迷っていた。迷う理由は雨だ。日本列島に3つの雨雲がせめぎ合っていた。晴れ間を走るとすれば、こんなルートになる。
リアス式海岸… |゚Д゚)))
命を刈り取る形をしてるだろ。
これは酷いアップダウンルートになっていそうだ(( ‘д`))ハハハハ
リアス式とは、せまい湾が複雑に入り込んだ沈水海岸だ。山がそのまま海に沈んでいる。
ごくり…
「きっと過酷な旅になる」直感がそう言っている。
しかし、アップダウンが大好きなりっけいは、それでも進んでみたかった。海を見れるコースはそれほどまでに魅力的なのだ!!(断言)
翌朝。天気は晴れ!よっしゃあ!
ここから北上していけば晴れ間を縫って走っていけそうだ。
昨日の雪でぐっしょり濡れていた靴も、ストーブのおかげですっかり乾いた。宿の人に見送られて宿を出る。
「気をつけていってらっしゃい!」と声をかけてもらえることがとてもうれしい。今日も安全に走るぞ!
まずは朝ご飯を食べに行こう。
水産卸市場へ。
併設された食堂に入ってみる。
むむむ?地元のおっちゃんがたくさんいるぞ。ついニンマリしてしまう。朝からおっちゃんが集まる店は、美味しいご飯がある店なのだ!
海鳥の集まるところに魚群があるように、おっちゃんの集まるところに旨い飯があるのだ。(勝手な持論)
ドーン!
3色丼じゃい!
お、おおおお!コメがぁ!コメがうまい!もっちりぷくぷくに膨れたおコメが…!いい出来だ。
めかぶと中トロを混ぜ合わせて、ネギトロ風にして食べてみる。
!?
ねばうまぁ!!粘り気のあるメカブ。その中のシャキシャキ繊維が心地よい。そこへ中トロを混ぜると、うまさが最高潮。アクセントにシラスも一緒にいただくと、また違った美味しさに変わる。これは最高の三位一体では…?最高の朝ご飯じゃあないか。おなかいっぱい頂いた。ウマウマでした。
残念ながら市場の方はもう終わっていた。またの機会に覗きに来てみよう。
さあここからが本番だ。
何しろ何も無い土地を走るわけだ。下調べしてみたが、コンビニ、スーパーなんてものは無さそうだ。食堂があるかどうかも怪しい。。。道中の食料補充は期待できないな、と判断した。コンビニでいろいろと補給食を買ってみた。
これだけあれば1日走れるはず。(たぶん)
よっしゃ、レッツラゴー!!

晴れ渡った空と海が気持ちいいぞ!
序盤は坂がゆるい。海を眺めながらのんびり走っていく。ガマさんも余裕がありそうだ。
うん、快適快適!
あっという間に、
女川町の道の駅に到着。


2年前に新設された駅舎。
ここが終着駅。ここから北には線路が伸びていない。引き返すならココだなぁ、となんとなく思う。
さかな市場なるものが。

え、一串で500円!?

ってことはタラ一尾が100円なのかよ…なんだ、このぶっ壊れ価格は。缶ジュースよりも安いじゃないか!!
ほかにもイワシが30匹で400円とか。。破格にもほどがあるぞ。漁業関係者の儲けあるのかしら。
女川に住めば、ひと月の食費1万円になるなあ。

おさかな市場を見て回る。
ん?ウニが600円??
「見た目は悪いけど、味はいいよ」と手書きの文字が。なにこれ、おもしろい。
気づいたら購入していた。
この量で600円…!やっすぅい!!
ガマさんと一緒に食べてみる。ふわぁ~~ん!鼻から海の匂いが抜けていく。苦みや渋みがかなり少ない。とってもおいしい。口の中でふるりと溶けだして、舌全体にウニの味が広がっていく。
もしかして、ミョウバンを最低限にしか使ってないのでは?(ミョウバンは型崩れ防止のために使われるが、味が苦くなることもある)。全国を旅してきたガマさんも「おいしい、おいしい」と絶賛している。
絶品のウニを、獲った土地でいただく。こんな贅沢をできるから、旅は楽しいのだ。見た目は悪くとも、確かにお味はかなりおいしかったです、ごちそうさまでした。
女川町を抜けるとすぐに、山が僕たちを迎え入れた。

さあ、ここからがヒルクライム!!気合い入れていくぞっ!!
えっちらおっちらと登っていく。ヒルクライムはわくわくする。目の前の坂をどうやって越えるか、想像してみる。斜度、風向き、舗装を読み取り、踏み込み方、パワーを制御する。自分の持つチカラを無駄なく使う。たん、たん、たん、のリズムを刻んでいく。脳内シミュレーション通りに、登り切れた時には最高にうれしくなる。クライマーズハイってやつだ。息が切れながらも、楽しめる。

朽ち果てた看板。
どれほどの僻地か教えてくれるのが、劣化した看板だ。この地はかなりの 辺縁の地だと分かる。

どびゅーーーん!

眺望は最高にかっこいい。
人工物なんて見えない。太古から変わらぬ景色を旅できる、そんな幸運さに感謝するっきゃない。

いい海だ!
海が深くまで入り込み、湾が独特な形状を保っている。

3次元で捉えられる道が大好き。

ガマさんはイケメンだな。

いや。前言撤回。ただの変態だ。
ここで持参したおにぎりやらをもしゃもしゃ食べる。穏やかな海を見ながら、談笑する。素晴らしい景色をおかずに食べるご飯がうまい。話も弾む。自転車旅がいかに楽しいのかを語り合う。「東北の海ライドが最高に楽しい」2人の意見が一致した。気分はすっかりピクニック気分。楽しすぎる。
ここからの道がひどかった。。。ぼくの希望で雄勝(おがつ)半島へ行くことに。

海の向こうに金華山が見えるらしいので、見に行きたかった。(地形からしてもヤバい道)
半島に入った瞬間に一気に坂がきつくなった。ダンシング不可避。一気に駆け上がれぇえええ!!
ぐっはぁあああああ!!ハァハァハァハァ…!!
おまけに強烈な向かい風だ。湾の中に流れ込む風が強すぎる。ペダルを踏んでるのに、押し戻されそう。
ここまでのアップダウンで疲労を溜めてきた身体にはツラいぞ!

あのガマさんも四苦八苦している。
6.5kgの荷物を背負ってクライムしている。天性のヒルクライマー。
めちゃくちゃ楽しげだったのできっと頭がイカレている(称賛)

切れる息、動かない足、上がりっぱなしの心拍。
登って降りて、登って降りて…また登って…
この道は一体いつ終わるんや。と息を切らせいると、目的のビュースポットの葉山神社に到着。すごく遠かった気がするぞ。

バイクもおつかれ!(ぼくらも道にぶっ倒れそうだった)
肝心の景色は、

ぜんぜん良くなーーーい( ゚Д゚)
曇ってるじゃんかよ!!くうううう!!(泣)
天候は仕方がない。
またアップダウンしてきた道を戻る。今度は追い風なので、ずいぶん楽だった。ほんと自転車は風の乗り物だなあ。
しばらく行くと。。。
あああ!!

食堂だ!!
無いと思っていた食堂が目の前に現れた!よ、よかった~。(正直、持参した食料じゃ全然カロリーが足りてなかった。めちゃくちゃ安心した。)
いそいそと席に着く。ほかにもお客さんがいっぱい来ていた。

銀タラのカマ焼き定食をオーダー。
うまうま!!しっちゃかめっちゃかに漕いできた身体が栄養を求めていた。過度な運動のあとに食べるご飯のおしいいことよ。滴るような脂、ふっくらと焼かれた身。和食なのに、ハイカロリー&オイリー料理を食べられて大満足だった。
地元の人だろうか。お客さんがやってきた。お店の人と仲良さそうに話している。『今日は焼き魚の気分だなー』とオーダーしつつ、さらっと店の洗い物をしていた。え?どういう関係???初めての光景に驚く。
お店の人も『あー、すんません』的なノリでお礼を言ってる。あ、ただの常連さんが店の手伝いをするのか!!すごいな。このゆるさすごいな!
お昼ご飯を堪能したぼくらは食堂のおばちゃんらにお礼を言って店を出た。(この店が無ければハンガーノックになったかもしれない)
元気になるとペダルが良くまわる。ひたすらにアップダウンを乗り越える。もう慣れてきた(白目)

大川小学校跡地に着いた。
ここは震災の跡地。悲劇の場所。見学してきたがかなり重たかった。詳細は書かないでおこう。ただ、被災場所がここに残っていたよ、と記録しておく。(気が向けば別の記事で書くかもしれない)
さて。跡地からさらに自転車を進める。

北上川の河口。ここが東北最大の河川なのだ。景色がとってもいいぞ。
一軒、気になる建物があったので立ち寄ってみる。

川のビジターセンターだ。

北上川の生き物についての展示がたくさんある。
係りのお姉さん(美人)に声を掛けられる。
地域に根差した知識で、知らない世界をどんどん教えてくれる。自生するヨシという植物、ヨシを利用して家屋をつくる話、ヨシ刈りの風習などなど。お、おもしろい。
話が数珠つなぎになる。植物から、川魚、風景、地産の海産物。すっかり話に引き込まれてしまった。楽しい時間を過ごさせてもらった。ありがとうございました。
なにか還元したいぞ、と思うぼく。入場料は無料だし、どこかでお金を使える場所はないものか。せっかく楽しませてもらったんだ。
あ、となりに売店があるぞ。売店に入ると早速メカブ茶をもらった。
和菓子買ったら、

コーヒーも、もらえた。
この人たちサービス精神豊富すぎませんかね??(ぜんぜん還元できない)。ここでもガッツリ話し込む。ここの地域の歴史、復興途中の街の話、観光としてなにをしていくのか、などなど。
いくらでも話ができるけど、そろそろ行かないと日が沈んでしまう。名残惜しいが、ビジターセンターを出る。ありがとうございました!
ここからは一気に飛ばす。最後のお目当てが、夕暮れの海なのだ。とくに神割崎という名所の黄昏がきれいらしい。
いっそげーーー!!相変わらずの坂まみれの道だが、なんてことはない。もうすっかり順応した。トップスピードで駆ける。

ぎりぎり間に合いそうだ!!
おおおおお!!

大迫力なのに神秘的。

伝説とよばれる神割崎。大地震と津波にも負けずに、岩は立ち残っている。

ざざざざざざ。海が呼吸するように、潮が押し寄せる。
ああ、美しい自然だなあ。岩の合間を抜ける飛沫の素敵なことよ。。。
と感慨にふけりながら撮影する。と…

ぎゃあ!ちべたい!!

黄昏れるガマさん。絵になるなあ。

ガマさん撮影のぼく。(撮影うまい)

かわいい。
二人でけらけら笑いながら、夕焼けを眺めていた。いい1日だった。

宿がある南三陸町までラストスパート!
脚力のあるガマさんに牽かれながら、山道を乗り越えていく。登りでも30km/hというハイペースっぷり。体力お化けかよ。
先頭交代!ガマさんがぼくの後ろにつく。ここで問題が。。。
ガマさん「あれ、バッグの蓋空いてますよ??」
ぼく「ふぇい!?」

ぎゃああああ!
サドルバッグがあいとるwww荷物全部落としたwwwww
絶望。
中身は、輪行袋、着替え、充電器類、ぐらい。1番必要なのは、輪行袋!これが無いと強制自走帰還になってしまう(´;ω;`)ガマさんのご厚意に甘えて、一緒に来た道を戻る。ガマさんのライトVolt 1600がめっちゃ役立った。明るいし、照射範囲は広いし、すごくよく見えた。ありがてぇ。
2kmほど戻ると、荷物が見つかった。ぽろぽろ落としていたらしく、全部ちかい場所にあった。よかったぁああ(;´∀`)どれも車にも轢かれていなぁった。運が良かった。。。
坂道、逆風、荷物を落とす、肉体も精神もボロボロだった。だけど、格別のお楽しみがあった。

三陸キラキラ丼だーーー!!
メカブとマグロのたたきの相性がめっちゃいい!!とろとろネバネバでお口が幸せ!

走ったルート。

平地なんてものは無かった。