【標高1500m】蔵王坊平ヒルクライムレースに出てみた話【レポ】

ヒルクライム

うひょぉぉおおお!!!
ヒルクライムレースに出てきたよ!

ゆるゆるの旅が大好きな僕には珍しいイベント参加!会社の先輩である長井さん(仮名)に誘われて、ちょいと出てみようかと思ってね。

…というのも、『蔵王坊平ヒルクライムinやまがた』は…
日本一登るヒルクライムだからだ!(強調)


標高差1529m、距離25.2km(ルートラボのリンク

イカれてやがるぜ!めちゃんこ登るんだよ。標高1700mまで駆け上がるだなんて意味がわからない。

ちなみに富士ヒルや乗鞍と比較すると、イベントの頭のおかしさがよく分かってもらえると思う。

(参考記事:FRAME 蔵王坊平ヒルクライム)

そんなイベントに参加してきたよっと!

蔵王って?

舞台である蔵王をかるーく紹介しておこう!

山形-宮城の県境をまたぐ標高1700mのお山。
まず蔵王(ざおう)って名前からしてイカついぞ!The 王なのか?King of mountainなのか?

夏は登山、冬はスキーにと観光名所として有名だ!

『御釜(おかま)』と呼ばれる火山口がなんとも美しいのだ!ぼくは大好きで年に3回ぐらい訪れている。

山形のNo.1観光地の蔵王…その道路を全面通行禁止にして開催される…!!自治体も本気出してきてる!今回は第一回目のイベントだ。いやはや、どうなることやら。。。

バイク紹介

機材はいつも通り!

フレーム: ARGON18 GALLIUM
ホイール: Dura-ace  C24
コンポ: SRAM Red eTap

空荷で7.7kgというね。充分に戦えるスペックだ!信頼できる!

当日の朝

アラームに起こされ5時起床。

非常に怪しい天気だ。小雨がしとしと降っている。

まあ、天気はなるようになるさ!走ってしまえば関係ない!

クルマに自転車を詰め込んで出発!

早朝の田舎道はガラガラだ。おにぎりをモグモグしながら運転する。あっという間に会場入り。

おおお!!盛り上がってる!!


高級機材ばかりが並んでるんだけど…。YONEXフレームにライトウェイトホイール履いたバイクがあって腰抜けるかとおもった(130万円ぐらいするやつや…)

長井さんたちとも合流してだらだらお喋り。レース前の変な緊張感が抜けた。

コースプロフィールはこんな感じ。

基本的には5~6%の斜度でたまに10%を超えてくる。下り坂は2箇所のみで、それ以外は全部登り!うーん、鬼畜!!

まあロングヒルクライムが大好きなぼくとしてはかなり嬉しい。得意なわけではないけど、好きなんだよね、ヒルクライムって。自分の限界のパワーで登り続けるって最高じゃない…?

スタート直前

最初の2.5kmほどはパレードラン。

住宅街を駆け抜けるだけののんびりライド。地元のおばちゃんおじちゃんたちが手を振ってくれる。わー!わー!自分が選手になれた気分で楽しい。


スタート地点に到着!

ここからタイム計測が始まるのだ。

ぼくの目標は100分以内に完走すること
ヒルクライムのタイム指標に「獲得標高ペース」なるモノがある。

「1時間に何m登れるのか?」をベースに簡単に計算できる。ぼくの脚力では1000m/h程度。ベストコンディションでこのペースだ。

今回は1550mを登るので93分かかる。途中下り坂が1kmあるのでそこで2分はかかるだろう。後半はバテてペースダウンして+5分。これで計100分となる計算だ!
標高1500mタイムアタックの経験がないから、どれだけ体力が持つのか分からない。この大会も第一回目なので指標となる記録もないのだ!ざっくり100分以内を目指そう!!

そんなことを考えながらスタートの瞬間を待つ。あーー、緊張でドキドキしてきた…!
と、ここで運営トラブルが…。どうやらチャンピオンクラスの人たちが間違って、フライングスタートしてしまったそうな!スタート地点で待機のはずが、何名か先に行ってしまったらしい。あとから話を聞くと10分以上登ってきてから、スタート地点に戻されたとか。これは運営ミスだったそうで、選手はちょっとかわいそうだ。。。

そんなトラブルがありつつもスタート…!!

いざ、スタート!

クラス別で順番に出発する。ぼくの出場クラスはBクラス(20歳代)だ。

スタート位置が良かったので、最初からBクラス先頭集団の中に入る。
(チャンピオンクラスの人たちは目視範囲外までぶっ飛んでいった。ありゃバケモンだ…!)

脚力がありそうな人を中心にペースをつくっていく。3%ほどの緩斜面なのでまだついていける。よしよし、いいぞ!スチャ、スチャ、とギアを落としていく。速度は20km/hを下回らないぐらい。風もないので走りやすい。

2km進んだところで5人ぐらいまで絞られていた。ふむ。みんなまだ余裕がありそうだ。ここは様子見でついていこう。

…ふと…集団のスピードが落ちた。そのとき2人が飛び出した。速い!!ダンシングで一気に駆け上がっていった!!彼らについていこうかと思ったが、あれは無理だと一瞬で判断した。瞬発パワーがないぼくにはキツイぞ。

3人でえっちらおっちら登っていく。この時点で息が上がりっぱなしでかなりMAXパワーを出していた。GARMINを見ると1000m/hできっちり登れている!!!いいね!
ただ体力面は意外ときついな。まだ緊張感が抜けていないからか、無駄に力んでいるぞ!

…あ!
唐突に絶望を感じた。目の前が壁だ!!いや道なんだけど、壁に感じられた…!!

これが「ホワイトロック」と呼ばれるコンクリート坂道だ。最大斜度が14%という難所。目のあたりにすると壁に見えるから不思議だ。
くぅぅううおおお!!インナーローにギアチェンしてダンシング!!!

いけ!のぼれ!はしれ!!!

自分を叱咤激励してペダルを踏みこんでいく!!みんなツラそうだ!ここが踏ん張りどころだ!!いけっ!!!

…ふぅ…超えたぞ。距離が200mほどで助かった。

ごう、ごう、ごう…後ろからとんでもないスピードで上がってくる人たちがいた。
30代、40代クラスの人たちだっ!!!

一目見ただけで感じた!!化け物の匂いがぷんぷんするぞ!!

綺麗なフォーム、パワーのある脚、絞った身体!!『妖怪坂のぼり』だ!!
こんな妖怪には勝てるわけがない!!!!そそくさと道を譲る。妖怪戦争には巻き込まれたくない!!

そのあとも30代クラス2人がゆっくりと登ってきた。
これはチャンス!!便乗して着いていく。ちょうどペースも合いそうだ!!同じ20歳代クラスの2人は着いてきてない!!

「これはなかなか上位に入れるかも?」と下心が出てくる。相変わらず体力はキツイが、ペースダウンしなければいいだけの話だ!
いまあるだけの力を全投資だ!!!!ここでスイッチを入れる!

オラオラオラァ!!

30代クラスの2人を引きちぎり、全力で踏み倒していく!!
ここからだ!!ここから一切、脚をゆるめずに走り切る!!!

息が苦しい?心臓が破裂しそう?

…そんなの関係ないね!!!

目の前の坂を乗り越えていくだけだ!なにも考えることはない!!!!登り倒せ!!踏み倒せ!!蔵王をぶっ飛ばせ!!!!

そう思うだけで思考はクリアになる。変な緊張感もすっかりなくなった。自分のペースで走れるから、集中もバッチリできている。

目の前を走る人をロックオンして追いかけ続ける。すぐに追いつけるわけじゃないけど、確実に距離を縮めていく。

ハァア!!ハァア!!ハァア!!ハァア!!

息を荒く、表情もぐしゃぐしゃだ。それでも前を見て、懸命に追いかける。いま自分の順位がどれほどにいるか分からないけど、そんなことはどうだっていい。順位は結果であって、目標ではないのだ!!目標は100分を切ること。

ペースを落とさないために、自分自身に鞭打つために、目の前の人を仮想敵として追いかける。

進め!!今だけでいいから前へ進め!!

いったい何度願ったことだろうか。どれほど苦しいと感じただろうか。とうとう目の前の人たちをとらえた!!うらぁ!!!

ジャイアント乗りとリドレー乗りの方だ!!

2人ともかなり苦しそうだ。ぼくも駆け上がってきたばかりで脚もパンパンだ。ここは3人で協力して上がっていく。とくに声掛けしなくとも、安全に配慮しあって走れる。路面はウェットで、斜度もキツい。なにより霧が出てきた。

!!!

落車か!?チャンピオンクラスの人が道路わきで止まっていた。血は出ていないけど、肩を痛めていたように見えた。幸いオートバイの巡回スタッフが対応していた。ここはスタッフさんに任せよう。ぼくらはビビりながらも横を通っていく。

思わずリドレー乗りの人に声をかける。
ぼく「こわいですね。側溝にハマったんですかね?」
リドレー乗り「あー、先行者の後輪にハスッたのかも」
(*ハスる:前の人の後輪に自分の前輪を当ててしまうこと。ハンドル操作が効かなくなるヒヤリハット案件)

こぇええ!!自分のことで精一杯だと前が見えなくなる気持ちはよくわかる。ご安全に!!

残り8kmだ!もう3割で終わりだ!いやだ、終わりたくない!こんなにも全力を出し続けられるって最高に楽しいんだから!!
だからと言って手を抜きたくない!!

もう体力という体力を使い果たしてしまったけど、まだいける!そう確信した!!気持ちは折れてないぞ!!

ジャイアント乗りとリドレー乗りの2人を引きちぎる!!しばらく追いかけられて先頭を取られたけど、気合でぶっちぎる!!!

俺が前を走る!!!!!

ここまで一緒に走ってくれてありがとうございました!!!!でも、さよならバイバイ!!!

5%の斜面を25km/h以上でぶっ飛ばす。自分にもこんな力があったんだとふっとうれしくなる。

もうここまで自分を追い込めるシチュエーションはなかなかないぞ!!ちょっとでも油断すれば後ろからあの2人が追いすがってくる!!

霧で視野は30mほどだ。後ろを振りかえれば、なんとなく影が見える。逃げる逃げる逃げるッ!!!

チェーンの擦れる音と、荒い息の音。静かな山のなかでひとり熱くなっていた。

オラオラオラァ!!!と何度踏み込んできただろうか。「もう終わってくれ!!」と何度祈ったことだろうか。
それでも「やっぱり楽しくて仕方がない!もう少しだけ走っていたい!!」と何度も感じていた!!!

今の走りが過去最高の走りであることは実感していた。練習以上の力を発揮できる快感に浸っていた。こんなクライマーズハイは二度と経験できないかもしれない。

きた!!!

ラストの下り坂だ!!!!
3%の下り坂をトップスピードで駆け抜ける!!!いっけええええええ!!!!!50km/h以上でダウンヒル!!!

そのままラストの10%の坂へ突入!!!
この区間は、ふだん有料道路なのだ。そこを特別開放して登れるという贅沢仕様。試走では入れなかった道なのでまったくの未知!!しかも霧で先の勾配がどうなっているのかなんて、ちっともわからない!!!

でも進むのみだ!!今できることを全力でやる!!!後悔のない走りを実現する!!!!

たったそれだけの自己満足のためにすべてを賭けられるだなんて、最高に幸せだ!!

最後の最後!!
のこり1kmもない!!山頂特有の吹きおろしの風に阻まれる!!それでも力は緩めない!!!

ペダルを踏む!チェーンが動く!!ホイールがまわる!!バイクが前進する!!

それだけシンプルな挙動が、ぼくを熱く燃えさせる!!

いけ!いけ!!いけぇえええええええ!!!!!
いくら苦しくったってもう終わるんだ!!すべてを投げうて!!!
ゴールの瞬間はすぐそこだ!!!とまるんじゃねえええええええ!!!!!

ばしゅんっ!!!!!!

気づいたらゴールラインを越えていた……。
無我夢中のゴールだった。唐突に終わりが来た。

…やったぁあああああ!!!
全身全霊でゴールできたぁああああああ!!!!

全てが完璧な走りだった。何一つ後悔がない。ひと踏みひと踏みを積み上げられてきたからこそ、満足感でいっぱいだった。もう順位やタイムなんておまけみたいなものだ。

自分自身をきっちりコントロールできたこと。
すべてを全力で戦えたこと。
なによりヒルクライムが楽しいと心の底から感じられたこと。

何もかもが輝いていた。美しい瞬間に立ち会えた。このためにぼくは走ってきたのかもしれない。

ゴール後

さて、タイムはどれほどだろうか。途中から気にする余裕がなかったんだ。

85分!?

目標よりも15分も速いとな!これには自分でもかなり驚いた。なんちゅうパワーを出してきたんだ。こんだけ走れれば、そりゃ後悔もないはずだわ。

この後は極寒のダウンヒル。

山頂は気温10度。下界は20度越えなので、ほんと別世界。


預けていた荷物を受け取り、完全に冬装備。

バイク先導で30km/hで下っていくが、寒すぎて胃腸が冷えて痛かった。
下山第一陣だったので、みんな早くゴール人たちばかり。集団ダウンヒルでも安心感半端なかった。


みんな息ピッタリで安全下山完了!!

会場に戻ると、順位発表が…

なんと、わたくし20歳代クラスで

2位でしたーーー!!!

やったね!!!まさかこんなにもいい順位だなんて思っても無かった!!

自転車やってて賞をもらうことなんて初めてだから、どきどきしっぱなしだった。きっとレース中よりも心拍上がってたと思う。

副賞として山形の梨を5kgもいただいてしまった!!

いままさにこの梨を食べながら、ブログを書いているけど、もうオイシイのなんのって!!フルーツ大国・山形を名乗るだけあって相当いいブランドだ!!ありがとうございます!!

そんなわけで『蔵王坊平ヒルクライムinやまがた』を最高に楽しんできたよ。超ロングヒルクライムはクレイジーな世界だったけど、満足しっぱなしの素敵なコースだった。

運営も安全面や進行もばっちりでよかったです!来年も開催されるなら参加してみような!

いやはや、とても楽しいイベントだった!!最高!!!!

おわり。

(おまけこの一年前に鳥海山ヒルクライムレースに出たお話!!