24時間で557kmを走れた理由を、ちょっと紹介してみる【国道8号線キャノボ】

202111R8キャノボ

チャレンジしてきた「国道8号線キャノボ」を、ちょっとばかし考察してみよう。

今回は、新潟市→京都市の557kmを23時間39分で走ってきた。まあ意味の分からないチャレンジなんだけど、自分でもなんで達成できたのかよく分かっていない。これ達成するまでに過去3回も失敗してるからね。

あまりの超長距離ライドなので、あまり参考にならないかもしれないけど、こういう形でまとめている記事も珍しいと思う。自分の振り返りも兼ねて、このチャレンジの裏側を紹介してみましょ。

メンタル面については、走行記(前編後編)で詳しく書いたので、よかったら見ていってね。

ではメンタル面以外の部分で、「なぜ達成できたのか?」をちょっと考察してみよう!

(マニアックな記事になってしまったので、興味ある所だけテキトーに読み流していってね!)

バイク紹介

フレーム:ARGON18 GALLIUM 2017(レビュー
ホイール:Mavic Cosmic Ultimate 2016(レビュー
タイヤ:Vittoria rubino pro G2.0 25C チューブラー
クランクセット:SHIMANO DURA-ACE R9100 50-34T
変速系:SRAM red eTap 11s
ブレーキ:FSA K-FORCE SL-K
スプロケット:SHIMANO ULTEGRA R8100 11-30T 11s
ペダル:SHIMANO PD-M540(両面SPD)
サドル:Fabric Scoop Race Radius

レース向けフレームに、超軽量ホイールを履かせる、贅沢仕様バイク。チューブラータイヤなので、軽量で転がりが気持ちいいホイールになっている。最高峰グレードのホイールだけだって、極上の乗り心地だった。コレ無しには生きていけないほど。

あと、なるべく低パワーで走れるアセンブリにしている。ギアもF34/R30とギア比もかなり小さい。

「速く走れなくとも、結果的に早く走れるバイク」を目指した結果が、こうなった。

だが、これが大正解だった。

後半になるとパワーがまったく出ず、平地を走るだけでもギリギリの状態だった。そんな中、逆風や登り区間ではこの軽量ホイールと低ギア比に、大いに助けられた。自分の限界値をすこしだけ底上げしてくれる機材だった。

もともとパワーがないぼくとしては、このヒルクライム仕様で臨むのがぴったりだった。

装備紹介

今回は装備もかなりシビアに考えた。ポイントは2つ。

①低重心化
②荷物の選別

まずは低重心について。

いつも使うサドルバッグを廃止した。

オルトリーブのLサイズを使っているが、あれだけでも300gほどある。タイヤ1つ分も重量がかさんでしまうのだ。それならチューブラータイヤを2本だけ持って、サドルバッグを外した方がよっぽど軽量化にもなる。タイヤはマジックテープでサドル下に固定した。

ロードバイクでも最も高い位置にあるサドルバッグをなくしたことで、走りもキビキビして気持ちよかった。サドル付近が重くて左右に振られるような感覚はあまり好きじゃない。お尻に負担もかかるしね。

あとは、ダウンチューブ下に輪行袋を取り付けたこと、ドリンクボトルを750→950mlに変更したこと、で少しでも低重心化に貢献できるようにセッティングした。

ドリンクボトルを950mlにしたのも大正解だった。今回は自販機で買うことが多かったからだ。500mlペットボトル2本を買えば、ほとんどボトルに入ってしまうのだ。口のべたつきが気になるので、ジュースを水で割るスタイルが好きなので、最高の配分で「薄いジュース」が作れてものすごく助けられた。

あと、そもそも論だけど、「荷物の選別」にも気を使った。ツールケースに必要最低限、だけど様々なトラブルに対応可能な装備を選んで詰め込んだ。

重点的に対策をとったのが…

①パンク
②チェーンまわり
③eTap(無線変速)の電池切れ

の3つだった。

パンクは3回まで対応できるように、パンク修理剤1つと、チューブラータイヤ2本も持って行った。結局パンクしなかったので、無駄な荷物だったかもしれない。けど、安心感を得られながら走れたので、結局は必要な装備だったと思う。


ツールケースに詰め込んだ図。

ここにモンベル トレールアクション グローブ(公式サイト)を詰め込んだ。ぎっちぎちだけど、この量を収められるR250ツールケース、さすがです。

なにかトラブルがあれば開ける予定だったけど、一度も開けずに走り切れたのがなんとも幸運だった。

服装

服装はかなり個人差が出るので、簡単に紹介していこう。

ぼくは最低気温に合わせて、服装を選んでいる。暑いのは耐えられるけど、寒いのはホントに耐えられないんだ。

気象庁データを見る限り「新潟~京都」間の最低気温は10℃ほどになりそうだった。てなわけで、10℃対応できる服装を準備した。気合いで我慢すれば8℃まで耐えられるだろう、と甘い見込みを立てていた。

当日は最低5℃まで落ち込んだので、めちゃくちゃ体が冷えた。服装選びは失敗だった。今回のチャレンジの唯一の失敗だと思う。5℃の中、標高400mのダウンヒルはなんともつらかった…。

参考程度に、当日の服装を見てみよう。


上半身
ネックウォーマー/カステリ エマージェンシーレインジャケット/サイクルジャージ/おたふくインナー/GoPro/反射ベスト/グローブ


下半身
インナーパッドパンツ/短パン/おたふくタイツ/靴下/シューズカバー

とくに上着が薄いのが原因だった。重要な部位(首、手首、足首)が冷えることがなかったので、グローブやシューズカバーは大いに仕事を果たしてくれたと思う。ほんと、服装選びって難しいのよ。無限に服を運べるわけじゃないからね。

ルート選択

ルート選択には、めちゃくちゃ頭を悩ませた。ほんとーに悩んだ。

一番悩んだのが「近道をするか?しないか?」の問題だった。

そもそも今回のメインルートの8号線は569kmもある。ただでさえ長いルートなので、積極的にショートカットできるルートを取って、近道をしたい。

だが、北陸の市街地がそれを許してくれない。詳しくは、過去の挑戦記(コチラ)にも書いたけど、200km区間ずっと市街地を走ることになる。信号のストップアンドゴーが絶妙に邪魔をしてくる区間なのだ。

もちろんそれが最短距離なのだが、最短時間を叩き出せる道とは限らない。

過去3回の挑戦や、ほかに8号線を走っている方のブログ、Googleマップを何度もチェックした。結果的には「近道をしない!」と判断した。

15km遠回りしてしまうが、信号がほとんどなく山も少ないルートを選ぶことができた。これが功を奏して、ほとんど止まることなく北陸を駆け抜けることができた。

コンビニが少なかったけど、自販機でやり過ごせたし、そもそもコンビニには1回しか止まらなかったのでまったく問題がなかった。ルートも覚えてしまっていたので、走っているときにも安心感が大きいという心理的アドバンテージまであった。

ペース配分

500kmを超えるライドとなると、ペース配分がもっとも大事になる。事前の計算では、グロス(休憩込み)で時速23.3km/hを刻めるようにと考えていた。

では、結果はどうたっただろうか?

この表を見てほしい。とくに青い棒グラフを見てみよう。

1時間あたりに何キロ進めているのかを表しているんだけど、ほぼ一定ペースで走れているのがよくわかる。大きな失速がなかったのが、今回の特徴だ。

ちょっと分かりやすくすると、こんな感じ。

初っ端の6時間が「追い風区間」のおかげで、いいペースで距離を稼げた。この時点で27.0km/hを刻めていた。

途中に「食事かつ買い出し」休憩が入ったにも関わらず、グロス20km/hを割らなかったし、それ以降も安定している。400mヒルクライムの際には、パワーもなくなり大きく失速しているが、これまでの貯金もあり、大きなマイナスにならなかった。

信号がない区間をふんだんに取り入れている効果が、こういう形で現れるのはなんとも嬉しいものだ。

実質的に休憩を取ったのは、食事休憩の13分の1回のみ。仮眠もなかった。

風向き

これがロングライダーにとっての一番の関心事だろう。

風向きによっては天国とも地獄とも、その様相は簡単に変わってしまう。自転車は風の乗り物なのだ。

実際にチャレンジした日の各地点の風を調べて、50km毎にプロットしてみた。

どうだろう?新潟から京都へ走っているので、南西に向かって走っている。矢印の向きが風向きで、数字が風速(m/s)だ。

前半と後半で、風向きがまったく違っているのが読み取れると思う。石川県に入るまでは、3.2~4.1m/sもの強烈な追い風が背中を押してくれていた。時速にすると、11.5~14.8km/hもの風だ。この風と、信号の全くない新潟の海岸線のおかげで、一気に距離を稼げた。

これが新潟スタートのメリットかもしれない。

逆に後半は向かい風基調。ただ夕方以降はほとんど風が吹かず、逆風は感じ取れなかった。数字上では1.1~2.5m/sもあったようだが、せいぜい微風ほどだった。深夜には強い風は吹きにくいので、これまた助けられた形になった。

カロリー計算

ざっくり換算だが、この24時間チャレンジには約7,200kcalが必要になる。成人男性の1日の摂取カロリーの約2.8日分だ。

走っている最中は、1時間ごとに300kcalを摂り続けないといけない。これ以外にも寒さによる発熱も加味すると相当数のカロリーが必要になってしまう。

さて、当日のぼくの補給カロリーはどれほどだっただろうか。

チャレンジ途中で買ったごはんと補給食

ざっと摂取カロリーを計算してみた。(なにしろ途中で買ったのに食べなかったり、食べた記憶があいまいだったりするから、ざっくり計算として見ておくれ)

さあ、必要量7,200kcalに対して、ぼくが摂取したのは…たったの4,612kcalだ!2,600kcalもマイナスになってしまった!

カロリー詳細は以下。

ブラックサンダー×10
ブラックサンダー(バター)×6
スニッカーズミニ×4
ちくわ×8
SOY JOY ×2
親子丼×1
薄皮クリームパン×2
ウイダーインゼリー(プロテイン)×1
ジュース500ml ×4

これは胃腸の疲労と寒さに依るところが大きい。胃腸が強くないので、食べられない時間帯がやってくる。とくに深夜の6時間ほどはほとんど食べていない気がする。6~8時間で500kcalほどだったと思う。

これも悪いことばかりでもなく、「途中でコンビニに買い出しに行かなくてもいい」という超絶無茶な裏技を発揮できるので、食べられない体質でよかったなとも思う。

あと飲み物について。

途中で自販機に立ち寄ったのが5回。そのうち2回ほどは、寒さゆえのホットドリンクを飲むためだけだった。きちんと防寒ができていれば、自販機ストップは3回で済んだのかもしれない。

コンビニで1回、自販機で3回分は、ボトルにフルに詰めたので、水分補給は約4L分だった。スタート時にもマックス入れていたので、補水量は約5Lほどだろうか。

まとめ

ざっとまとめるとこんな形だ。

かなり自然に助けられ、体調が悪化せず、ルート選びが成功した、というのが今回の達成の要因だと思う。ほかにも機材にトラブルがなかったこと、事故や落車がなかったことも見逃せない。

達成ぎりぎりの実力しかないにもかかわらず、様々な幸運によって達成ができたんだと思う。

あまりにもツラい挑戦なので、今後はやらないと思うけど、こうして振り返ってみると楽しい挑戦だったのかもしれない。

ブログにもまとめているので読んでみてね!(前編後編

距離:557km、タイム:23時間39分

おわり。